【書評】狗神 / 坂東眞砂子のレビュー。あまり狗神が出てこない件

普段あまり書店で本を買わないのですが、この日はあるポップに吸い寄せられ、思わず手に取ってしまった本があります。
“狗神”という本です。
書店では“絶版となった本が有隣堂限定で復活”“傑作小説”という宣伝がされており、妖艶な雰囲気の赤い表紙も目を引いていました。なんとなく雰囲気があっていいですよね。

今回は狗神についてのレビューの記事です。
買おうか悩んでいる方の参考になれば幸いです。

あらすじ

過去の辛い思い出に縛られた美希は、四十路の今日まで恋も人生も諦め、高知の山里で和紙を漉く日々を送ってきた。
そして美希の一族は村人から「狗神筋」と忌み嫌われながらも、平穏な日々が続いてゆくはずだった。
そんな時、一陣の風の様に現れた青年・晃。互いの心の中に同じ孤独を見出し惹かれ合った二人が結ばれた時、「血」の悲劇が幕をあける!不気味な胎動を始める狗神。村人を襲う漆黒の闇と悪夢。
土佐の犬神伝承をもとに、人々の心の深淵に忍び込む恐怖を嫋やかな筆致で描き切った傑作伝奇小説。
有隣堂より

レビュー

全体の評価は3.0/5.0点というのが私の評価です。
ぼちぼち、という感じですね。

  • 分量・・・320ページという分量は小説としてはちょうどよい
  • 価格・・・640円(税抜)と少し安い。これは良いポイント
  • 総評・・・ 前置きが少々長いと感じます。伏線を張る為だと理解出来ますが、最初の100ページは肝心の”狗神”にまつわる描写が少ないことが残念です。中盤以降は面白くなりますが、妖怪の雰囲気は薄く、日本の部落の伝承という雰囲気が強い作品

物語の世界観を作るためか、同じ話、同じ恐怖を多くの登場人物の口から語らせるため少々くどい印象でした。
ストーリーは”主人公が善光寺でとある女から聞いた話”、という体際ですすみますが、あえて善光寺で聞いたという体裁にする意味・必然性は薄いように感じました。

また狗神信仰といえば四国が有名ですが、この話も高知県のものです。
著者の出身地であるため地名、方言などを含めた高知の田舎の世界観は非常にリアルに描かれています。ただ、陰鬱な田舎の文化・風習をそのまま描いている側面もあり、狗神のストーリーというよりは、被差別部落のストーリーという感覚が近いかもしれません。

映画版だと序盤のこのシーンはカットされているとwikipediaに記載がありましたが、映画を未視聴ながら妥当な判断ではないかと思います。
しかし物語が面白くなる後半では、これまでの伏線が回収され、一気に読み進めることが出来ます。

どの段階で伏線に気がつくかはこれまでの読書量や経験によるところもあると思いますが、血縁関係の伏線は先が見えてしまう感じもしました。

面白いなと感じたポイントは、ストーリーが狗神側からの視点で進行することです。(正確には狗神憑きの家系の人々)
本を読む前までは、山奥に迷い込むとそこには狗神が…というようなストーリーや、“犬神憑きの家系だけど質問ある”という有名なネットの話の様な世界観を想像していました。(自己というより対象として狗神を描く方式)

この点では人 vs 狗神という簡単な構図にならず話にリアリティーが出る要素かもしれません。
もう一つ予想と違った点は、狗神自体がほとんど話に出てこない点です。
一部で呪いが人を殺す描写もありますが、呪術によって”呪い殺す”というよりは、怒りを向けた相手が痙攣、発狂、心臓麻痺、というような形で死ぬことになります。

“狗神”というイメージで多くの人が期待するものとは少し違う気もします。
乱暴に言い換えるなら、村の人に恐れられている狗神信仰の家系が迫害される話、と言えるかもしれません。

まとめ

蒸し暑い夏の夜、空気が涼しくなってきた秋の夜、そんな時に読むじっとりとした恐怖を考えていましたが、ちょっと違いました。
狗神に興味がある人は民俗学的な話にも興味を持つ方が多いと思いますが、そういった民俗学的な面白さという側面はあまりなく、田舎の部落の差別の話、というのが総評です。

買ってみてどうだったか?と言われると!正直微妙です。

可もなく不可もなくと言う感想ですね。もっと妖怪や呪いの側面にフォーカスした本が読みた買ったです。(夢枕獏の陰陽師シリーズとか好きです)

しかし、この記事を書きながら気がつきました。
Amazon unlimitedなら無料で読めるそうです。

無料ならおすすめです笑

日本の田舎の空気、特に部落的な空気のホラーを読みたい方におすすめです。

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